子猫物語 2
先日の連休で、私と母は連れ立って叔父夫婦の家にお邪魔した。
あの猫に会えるのが楽しみだった。
子猫の頃は、いつもコタツにいて、自由に触ったり、
抱いたりしても大人しかった。
ところが今回は、玄関で私たちの姿を見るなり、
叔父に抱かれていた猫が急に逃げ出して、
家の階段を駆け上がると、2階に隠れてしまった。
「ああ、びっくりしたんだね、自然にしてれば来るでしょう。」
母がそう言って、叔父夫婦と買ってきたお寿司や惣菜で昼食を食べて、
語りながら過ごしていた。
せっかく猫を見に来たんだから…
と叔父が気を遣って、2階に逃げた猫を抱いてリビングに連れてきてくれた。
猫は、逃げたそうに廊下に繋がる引き戸の前で、
ミュー、ミュー、と可愛い声で鳴いていた。
あら可愛い、大きくなったね、
と母が抱き上げるとすぐに逃げて、母の黒い服は白い猫の毛だらけになった。
猫はこたつに逃げ込んで、
本当はかなり嫌がっていたのかもしれない。
でも子猫の頃から接しているし、深く考えずに母も私も、
猫を触ったりした。
ある程度時間が経って、
お茶も十分に飲み、帰ることにした。
猫の室内飼いの割には、玄関の戸を開け放って叔父夫婦は見送りやら、
お土産にビールのカートンを母の車に積んでくれたはいいが、
戸締り大丈夫か??
と私はひやひやしていた。
猫が外に飛び出した気配もなく、とりあえず安心して、家に帰った。
子猫が行方不明に…
次の日の朝、叔父から母に1本の電話がきた。
「あの時、帰り際見送りをした時に、
猫がもしかしたら逃げたかもしれない。
うちのなかにも、どこにもいない。
リビングの餌を食べた形跡もない。
消えてしまった…」
叔父の言葉を受けて母は気が動転し、
「どうしよう、探さなきゃ、
市役所も保健所も連休で閉まってる。
どうしたらいいの????」
と泣きそうになっていたので私は、とりあえず
「警察に電話しよう。
猫は落し物として扱われて、預けられる場合があるから。」
と言った。
母はスマホを押さえる手も震え、
「ねえ、掛けて~~」
と半泣きで動揺しきっていたので、私が掛けた。
警察は、丁寧に猫の特徴や、叔父の電話番号や、
叔父の名前の漢字などを復唱して聞いてくれた。
そうこうしているうちに母が、
「私、もう1回実家(叔父夫婦が住む)に行ってくる!!」
と、居てもたってもいられず上着を羽織っていた。
その時、母の携帯にもう1度着信が‥‥!
叔父だった。
「猫、見つかったよ。うちの中にいたよ。
服と服の間に隠れてたよ。」
それを聞いて母は、
「あ~良かったぁ!!今警察に電話してたのよ!!」
私は、
「あ、あ、すみません、見つかったようです、いました。
だから大丈夫です、どうも失礼しました。」
と警察相手の電話を切った。
とにかく、これを反省に、猫ちゃんには無理させたらダメだね、
猫ちゃんは思春期になったから、人見知りするようになったんだね、
と母と話し合って、『警察沙汰』になってしまった猫騒動は一幕を下ろした。
おしまい