星を継ぐもの

*星と共に過ごす* とある占い師の日常 

無題

創作:雨とガラスの靴





2人で歩いていたら、小雨が降ってきた。



あなたが大きな傘を広げてくれたから、



私は濡れずに歩いて行けた。




あなたにこうしてもらえると嬉しい、



と素直に言えずに、



大きくて、良い傘ですね、



と言葉を濁したら、



はい、780円でした、



と返ってきて、



私は可笑しくなって、



「相合傘が出来て嬉しいです」



と思わず声が弾んだ。




「今度晴れたら、あの公園でサンドイッチなんか食べたいですね」



彼が緑の木陰を指したので、



私は嬉しくなって、



「あぁ、本当に、そうですね!」



と心から答えた。




駅ビルの書店や、



大きな文具店などを適当に歩くと



私の左足首に擦り傷が出来ていた。



靴ズレだった。



「気が付かなくて、すまなかった」



彼は謝ると、絆創膏を買ってくれた。




あなたは悪くない。




カフェで時間を潰し、帰りの電車を待っていた。



彼は乗り場まで送ってくれた、



方角がわからない私の為に。




自宅近くの駅について、



長い階段を駆け下りたら、不意に左の靴が脱げた。



ガラスみたいだ、



と私は感じた。